呼吸筋トレーニングの専用器具をカートに入れたまま、買うか迷っている方は多いはずです。先に結論を出します。器具が必要かどうかは、巻き尺1本で判断できます。最大に吸ったときと最大に吐いたときの胸囲の差が3cm未満なら、器具で呼吸筋に負荷をかける前に、肋骨が動く状態を作るほうが先です。
呼吸筋トレーニングとは?効果と研究の現在地
呼吸筋トレーニングとは、吸うときに抵抗がかかる専用器具を使い、横隔膜や肋間筋などの吸気筋に負荷をかけて鍛える方法である。英語ではInspiratory Muscle Training(IMT)と呼ばれ、もともとは呼吸器のリハビリや、持久系アスリートの補助トレーニングとして研究されてきました。
研究で比較的よく確認されているのは、吸気筋の力(最大吸気圧)が上がることです。一方で、運動パフォーマンスや見た目への影響は研究ごとに結果が分かれます。研究でよく使われる条件は、1回30回前後の吸気を1日1〜2回、週5日程度、4〜8週間続けるというものです。体型やフェイスラインが変わるという根拠は確立しておらず、期待できるのは「息が入りやすくなる」「息切れしにくくなる」という機能面だと考えてください。
器具は必要か?巻き尺で測る胸郭拡張差
胸郭拡張差とは、深く吸ったときと深く吐いたときの胸囲の差である。呼吸筋が弱いのか、肋骨が動かないのかを切り分ける、いちばん手軽な指標になります。
測り方
- 立った姿勢で、脇の下のすぐ下(乳頭の高さ)に巻き尺を水平に巻く
- 息を吐ききったときの数値を読む
- 息を吸いきったときの数値を読む。差が胸郭拡張差です
当店で使っている目安
4〜5cm以上あれば、肋骨の可動域は十分です。この場合は呼吸筋の筋力が課題の可能性があり、器具が役に立つ余地があります。3cm未満の場合は、筋力以前に肋骨が広がる余地がありません。広がらない胸郭に抵抗をかけても、負荷は首や肩の補助筋に逃げます。巻き尺を引くとき肩が上がっていないか、鏡で確認しながら測ってください。
肋骨が広がらない人が器具を使うと起きること
吸気の主役は横隔膜と肋間筋ですが、肋骨が固いと、斜角筋や胸鎖乳突筋といった首の筋肉が代わりに働きます。器具で抵抗を加えると、この代償がはっきり出ます。吸うたびに鎖骨が上がる、首の前に筋が浮く、終わったあと肩が固い。これが出ているなら、鍛えているのは呼吸筋ではなく首です。
肋骨が動いているかは、下の肋骨の側面に両手を当て、鼻からゆっくり吸って確かめます。指が左右に離れていくのが正解で、前だけが膨らむ、肩だけが上がる場合は、器具の前に肋骨の可動域を作る段階です。
呼吸筋トレーニングが向く人、向かない人
向いているのは、胸郭拡張差が十分あり、階段や走る場面で息が上がりやすい方、歌や台詞で息が続かないと感じる方です。
次の場合は、始める前に医師に相談してください。気胸の既往がある、重い心肺の病気がある、高血圧の治療中、妊娠中。吸気に抵抗をかけると胸腔内の圧が変わるため、自己判断では始めないことをおすすめします。
現場で見てきた、器具より先にやることの順番
指導歴15年、通算15,000セッション超、俳優・ダンサー・歌手などプロ表現者を300名以上指導してきた中で、呼吸の悩みは必ず肋骨の動きに行き着きます。
パターン1:器具を買ったのに息の深さが変わらない
器具を数週間使ったのに変化がないという方に巻き尺を当てると、胸郭拡張差が小さいことがよくあります。この場合、器具は悪くありません。広がる余地がないところに負荷をかけていただけです。肋骨の側面を動かす練習に切り替えると、同じ器具でも感触が変わります。
パターン2:猫背で肋骨の前が閉じたまま
デスクワークが長く、みぞおちが縮んだ姿勢の方は、息を吸っても肋骨の前下がりが開きません。仰向けで膝を立て、下の肋骨に手を当てて、鼻から4秒吸い6秒で吐くだけの練習を1日5分、1〜2週間続けてもらうと、まず指の開き方が変わります。器具の使用は、そのあとで十分です。
当店では、器具の話をする前に、胸郭拡張差と肋骨の側面の動きを必ず一緒に確認します。
肋骨を動かせる体を、骨格デザインで作る
私が指導する骨格デザインは、骨盤・肋骨・肩甲骨の位置を設計し直すメソッドです。肋骨が骨盤の真上に収まると、横隔膜が上下にしっかり動く余地が生まれ、呼吸筋に負荷をかけなくても息が深く入ります。呼吸筋トレーニングが必要になるのは、その土台が整ってからです。
呼吸筋トレーニングのQ&A
Q1. 呼吸筋とは何ですか?
呼吸筋とは、息を吸ったり吐いたりする動きを担う筋肉の総称である。吸うときの主役は横隔膜と外肋間筋で、吐くときは腹横筋などの腹筋群が働きます。首の斜角筋は補助的な吸気筋で、頑張りすぎると肩や首のこりにつながります。
Q2. 器具なしで呼吸筋を鍛える方法はありますか?
あります。仰向けで膝を立て、下の肋骨に手を当てて、鼻から吸って肋骨を横に広げる練習が基本です。吐くときは唇をすぼめて細く長く吐くと、吐く側の筋肉にも負荷がかかります。1日5分から始めてください。
Q3. 器具を使うならどのくらいの負荷から始めますか?
器具の取扱説明書に沿い、最初は最大吸気圧の30%前後など、軽い負荷から始めるのが一般的です。吸うときに肩が上がる、首に力が入る場合は、負荷を下げるか中止します。持病がある場合は医師の指示を優先してください。
無料体験のご案内
器具が必要か、肋骨の練習が先か。60分の初回体験で、胸郭拡張差を一緒に測り、ご自身の状態に合う順番をお伝えします。
- 完全個室のプライベート空間で、人目を気にせず測定できます
- ウェア上下・シューズ・タオル完備。手ぶらで来られます
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執筆:NSCA-CPT/CSCS保有トレーナー・瀧本銀次朗。指導歴15年、通算15,000セッション超、俳優・ダンサー・歌手などプロ表現者を300名以上指導。

